バンコク国際モーターショー 急成長するタイの自動車マーケット。国産メーカーが相次いで参入する訳とは? 松下 宏がレポートする! [CORISM]

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【イベント・モーターショー】2013/04/16

爆発的に拡大するタイのマーケット。多くの日本メーカーも進出も国策によるものだ

バンコク国際モーターショー
 アジア最大規模を標榜するバンコク国際モーターショーが、今年も開催された。公称入場者数は190万人に達するので、東京をはるかに上回る動員力を持つ。クルマに対してシラけた雰囲気も広がる日本と違って、アジアではクルマを渇望するユーザーが多く、タイでは今まさにモータリゼーションが爆発しようとしている段階だ。

 振り返ると、タイの自動車市場は1997年のアジア通貨危機を受け、1998年には前年の半分ほどの30万台規模にまで縮小した。その後は順調な復調を遂げてきたものの、リーマンショックや大洪水などのときにはマイナス成長になった年もあった。

 それらが、完全に癒えて本格的な成長軌道に乗ったのが2012年の新車販売で、2011年の80万台規模から一気に140万台規模にまで急成長を遂げた。この2012年には同時に、乗用車の販売比率が初めて商用車を越えた。

 タイでは、1t級のピックアップトラックが高い比率で売れていて、地方に行くと乗用車と商用車を兼ねた使い方がされている。トラックの荷台にたくさんの人が乗って移動するシーンを今でも良くみかける。それが、2012年には乗用車が一気にトラックを逆転した。

 これには、タイ政府の政策が影響している。タイ政府は、タイをアジアのデトロイトに、というキャッチフレーズを掲げ、自動車産業の一大集積地にすることで振興を図ろうとしている。

 その中で、大きなポイントとなったのがエコカー政策で、一定以下の排気量で一定以上の燃費のクルマをエコカーとして認定し、これを生産して一定以上の輸出するメーカーに対しては法人税を優遇した。この減税政策に対応して日産がマーチ、三菱がミラージュ、スズキがスイフトをタイで生産するようになっている。

 自動車メーカーに対する減税とともに、ユーザーに対しても補助金を支給した。2012年中に初めてクルマを買うユーザーが、エコカーなど特定の車種を購入した場合、最大10万バーツの補助金を支給するという政策だ。

 ミラージュの最も安いモデルが38万バーツほどだから、10万バーツの補助金のインパクトの強さが分かるだろう。初めてクルマを買うユーザーに限られるとはいえ、この機会にクルマを保有しようと考えるユーザーが多く、自動車需要、それも乗用車の需要が一気に盛り上がったのだ。

 タイでは、昔から日本車の比率が圧倒的に高く、非常に高いシェアを占めている。もちろん欧米の自動車メーカーもほとんどのメーカーがタイで自動車を生産し、タイの市場に参入しているが、欧米のメーカーで本格的な工場を持つのはGMとフォードくらいなので、日本車のシェアが圧倒的な状態が続いている。

 補助金は2012年12月で終了したので、今はその反動が出ている時期だが、こんな状況の中でバンコク国際モーターショーが開催された。

2週間で6万台クルマが売れるバンコクショー!  トヨタ&三菱が、新型車をワールドプレミア

バンコク国際モーターショー
 今回が34回を迎えるバンコク国際モーターショーは、東南アジアでは最も歴史があり、大きな規模を持つモーターショーだ。

 バンコク国際モーターショーは、東京モーターショーのように見せるショーであると同時に、積極的に販売するセールスショーでもある。2週間の開催期間中に6万台のも受注を集める見込みというか、これも凄い。

 実際には、セールスマンが事前に仕込んでおいた分をショー会場で成約という形でまとめる台数が多いのだろうが、それにしても凄い数字である。
 
 販売もするショーであるため、ショー会場に隣接する大駐車場には試乗コースも用意されていて、ユーザーは実際に試乗した上でクルマを買うことができる。

 この特設試乗コースを使って、三菱自動車がメディア関係者向けの試乗会を開催したので、タイで販売される三菱車については別項で紹介したい。

 東南アジア最大のショーとはいえ、さすがにタイで世界初公開される車種は少ないのが実情だが、今回のバンコクショーに限っていえば、トヨタがコンパクトセダンのヴィオスをワールドプレミアとして発表したほか、三菱もコンセプトG4を世界初公開した。

トヨタ ヴィオス

 ヴィッツの基本プラットホームを使って作られるコンパクトセダンがヴィオスで、これまではアセアン専用車として7カ国で販売されていた。今回はフルモデルチェンジで大幅な魅力アップを図ると同時に、世界戦略車として80カ国で販売するクルマとして開発が進められた。

日本ではカローラがヴィッツ系のプラットホームを使って作られているので、それと同じクルマなのかと思ったら、カローラとヴィオスはホイールベースや足回りが異なる別のクルマだった。見た目の外観品質はカローラに匹敵する感じで、けっこう売れそうな印象だった。

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トヨタ ヴィオス
トヨタ ヴィオス
トヨタ ヴィオス

三菱コンセプトG4

三菱コンセプトG4
 ミラージュの基本プラットホームを使って作られた4ドアセダン。タイや東南アジアでは、クルマといえばセダンという考え方が根強くあるため、ハッチバックに続いてセダンを投入する計画がある。

 これも、見た目はミラージュとは全く違うクルマに見える仕上がりで、ひとクラス上のクルマかと思うほど。タイでは近く販売される予定とのことながら、残念なことに日本に導入する計画はないという。

三菱コンセプトGR-HEV

三菱コンセプトGR-HEV
 これは、ジュネーブショーに出品されていたトラックのコンセプトカー。ディーゼルエンジンを搭載したハイブリッド車という触れ込みだったが、ハイブリッドであることよりもトライトンの次期モデルのデザインスタディといったイメージだった。トライトンも相当に進んだデザインを採用していたが、このデザインのトラックが出てきたら相当にインパクトがある。

 ただ、実際にはデザインよりも、ディーゼルハイブリッドを研究開発するためのモデルというのが本筋のようで、どんな形で商品化されてくるかが注目される。

日産パルサー

 懐かしい名前のクルマがあるなと思ったら、シルフィのハッチバック版のモデルだった。フロント回りやインパネなどのデザインは基本的に共通で、後部にトランクを持たないことが相違点。

 これも、直ちに日本に導入する計画はないようだが、セダンはラティオとシルフィがあるのだから、ハッチバック車もノートとパルサーがあっても良いように思えた。

日産パルサー
日産パルサー
日産パルサー

日産マーチ

日産マーチ
 2010年に発売されたマーチが、マイナーチェンジでフロント回りのデザインを変更していた。デビューした当初はあまりにも凡庸なデザインという感じで、それが原因でタイでも日本でもあまり売れていないのが実情。それが、今回は一定の存在感のあるデザインになっていた。最初からこのデザインだったら、売れ方も違っていたのではないか。

ホンダ ブリオアメイズ

 東南アジアは、セダン系が人気を集める市場なので、ホンダも先に発売したハッチバック車ブリオのセダン版となるアメイズを昨年暮れに発売した。ヴィオスやコンセプトG4に比べるとずんぐりした感じでカッコ良くないが、セダンの売れ行きは順調という。

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ホンダ ブリオアメイズ
ホンダ ブリオアメイズ
ホンダ ブリオアメイズ

スズキ エルティガ

スズキ エルティガ
 スズキは、インドとインドネシアで発売して人気を集めているエルティガを、インドネシアからの輸入車として発売した。タイでは、バンコクショーが初のお目見えだ。

 スズキは、タイでハッチバック車のスイフトを生産して自由貿易協定のあるアセアン各国に輸出するが、インドネシアからはエルティガを輸入してアセアン域内での相互補完関係を高めていく考えだ。

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スズキ エルティガ
スズキ エルティガ
スズキ エルティガ

マツダ マツダ2

マツダ マツダ2
 日本では、デミオとして販売されているマツダ2も、タイではハッチバックよりもセダンボディのほうが人気が高い。けっこうカッコ良いセダンなので、日本でもレンタカーやビジネスユースとして売れるのではないかと思う。
マツダ マツダ2

フォード エコスポーツ

フォード エコスポーツ
 フォードは、タイで以前からマツダと提携してAATという生産会社(工場)を作り、トラックや一部乗用車を生産してきたが、昨年はフォード独自の乗用車専用工場を新たに建設し、フォーカスなどの生産を始めている。日本で発売されたフォーカスもタイから輸入されている。

 その工場で生産する新たなアジア戦略車がエコスポーツで、コンパクトクラスのSUV。これに1000ccのエコブーストエンジンを搭載したなら、日本でも売れるのではないかと思わせるようなクルマだった。

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