日産保管庫で発見!スポーツカーを目指したサニー随一の変わり者!?サニーRZ-1(B12型) 【日産ヘリテージコレクション探訪記 その5】 [CORISM]

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【イベント・モーターショー】2013/01/02

大衆車No.1をカローラと争うサニーの中で突然変異発生!?

サニーRZ-1

6代目サニーに設定された、サニーRZ-1ツインカムNISMO。1600ccのDOHCエンジン搭載。

 さてさて、当コーナー第5弾は日産保管庫で見つけた変わり種、「サニーRZ-1」についてご紹介していきましょう。

 かつて日産の看板車種だったサニーも、日本国内では2004年に販売が終了してしまっているのでどんな位置づけの車かご存じない方もいらっしゃるかも。ちょっと昔を振り返りつつサニーシリーズの中にRZ-1という車があることの意外性をお伝えします。

 サニーと言えば、トヨタ・カローラと繰り広げた熾烈な販売競争が有名です。日産自身が「本格的なマイカー時代の幕を開けた」と評する初代サニーは1966年4月、1000ccのセダンボディ(発売当時は2ドアのみ。その後4ドアも追加)をまとった大衆車として登場。名前は850万通にも及ぶ応募から選ばれました。当時のライバルは同じく名前を公募し1961年から発売されていたトヨタ・パブリカでした。

 パブリカは、排気量700ccで発売当初の価格が38.9万円。それに対しサニーはスタンダード・グレードで41万円、デラックスで46万円という意欲的な価格を掲げ大好評を博します。

 しかし同時期、パブリカの一つ上の1000ccの車として初代カローラを開発していたトヨタは急遽、エンジンを1100ccに変更し同じ年の11月に販売を開始。「プラス100ccの余裕」を謳い文句にサニーに猛烈な販売競争を仕掛けます。

 以降、カローラとサニーはモデルチェンジを繰り返しながら国内の大衆車No.1を争うライバルとして競争を繰り広げていきます。2代目サニー(B110型)がボディを大きくして「隣のクルマが小さく見えます」とカローラに対する強力な巻き返しに出たことなど、今でも業界の語り草です。

初代サニー(B10型)

カローラより7ヶ月先輩、初代サニー(B10型)

2代目サニー(B110型)

「隣のクルマが小さく見えます」とうたった2代目サニー(B110型)

5代目サニー(B11型)

駆動方式がFFに切り替わった最初のモデル、5代目サニー(B11型)

サニー史上もっとも「トラッド」なサニーが、もっともスポーティなサニーのベース!

サニーRZ-1ツインカムNISMO

「NISMO SPORTS INTERNATIONAL」のエンブレム入りのステアリングが装備されるRZ-1「ツインカムNISMO」のコックピット

 そのようなサニーなので、コンセプトとしては大衆車としてのバリューの追求。すなわち、お手頃な値段でいかに家族持ちの「一家に1台」ニーズを満たすか。ライバル車よりお値打ちと感じてもらえることに最も力が注がれます。値が張る特別な高性能バージョンの設定などはあまり行われませんでした。

 そして、そのコンセプトに忠実に、無駄な高機能をそぎ落としシンプル・イズ・ベストをストレートにアピールして成功したのが6代目、通称「トラッド・サニー」(B12型)です。ビートルズの歌に合わせ白いサニー・セダンがゆっくりと走るCMは、まるでコットンの生成りのジャケットのような使い心地の良さを予感させ、歴代サニーの中でも大ヒットしたモデルになりました。

 そんなサニーの、しかも当の6代目B12型で突如設定されたのがこの「RZ-1」。ベースはサニーですが、外板はほとんど新設計し2's COUPE(=恋人たちのためのクーペ)をうたうなど、サニーの中ではかなり特殊なモデルでした。

 当初は1.5Lターボ車、途中から1.6LのDOHC車も追加し、さらには「ツインカムNISMO」というバージョンも用意するなど2人を盛り上げる走りもバッチリ。キャッチフレーズは「美しいから、ころがしたい。」でした。

6代目、通称「トラッド・サニー」(B12型)

大ヒットした6代目、通称「トラッド・サニー」(B12型)。RZ-1のベース。

7代目サニー(B13型)

セダンはほぼキープ・コンセプトの7代目サニー(B13型)。「NXクーペ」のベース。

JTCCサニー

サニーはモータースポーツのベース車としては結構活躍。写真はJTCC(全日本ツーリングカー選手権)参戦車(8代目サニーB14型)

そしてファニーカーへ豹変!やはりサニーの中では異端児!?

日産NXクーペ

サニーRZ-1の後継、日産「NXクーペ」

 しかしながら、やはりサニーの名前からはあまりにかけ離れたイメージの車だったためか販売はぱっとせず、クルマ好きの注目を集めることも殆どないままモデルライフを終えます。

 その辺を反省したのか、日産はサニーが代替わりした時に後継車からはサニーの名前を外し、日産「NXクーペ」という独立したブランドにして販売を行います。しかしこの「NXクーペ」はご覧のとおりRZ-1とはガラリと変わった雰囲気を持つファニーカーっぽい車で、当然ながらNISMOバージョンなどは設定されませんでした。

 デザインもメイン市場である北米をターゲットにした、丸っこい宇宙船チックなイメージ。その後のブルーバード・セダン(U13型)やレパードJ.フェリーと同じテイストのアメリカ人好みのボディは日本では不評で、この車も1代限りで消えていきます。

 歴代サニーの中で、NISMOというとんがったスポーツ・バージョンが設定されたのは6代目のB12型サニーのみ。セダンや3ドアハッチバック車にもNISMOグレードはありましたが、スポーティ度でいえばやはりRZ-1が一番。

 RZ-1って、サニーなのにスポーツカーを目指したのかな・・・、と自分の限界も知らずスポーツに打ち込んでいた自分の青春時代を思い出すような、ちょっと甘ずっぱいような気持ちになると同時に、でももう一度こんな値段が手頃なのに一生懸命頑張っているクルマに乗って自分の青春を取り戻したい、なんて思わせるサニーRZ-1なのでした。

日産NXクーペ

前も丸いがおしりも丸い!ついでに車名のロゴも丸っこい!

日産NXクーペ

NXクーペのインテリアは極めてオーソドックスだが、メーターがちょっと変わってる!?

日産NXクーペ

サニーRZ-1とエクサ・キャノピーという変わった車たちに挟まれて置いてあるNXクーペ

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(レポート:堂島 昭

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