トヨタ プリウスPHV新車情報・購入ガイド 充電プリウス屈辱? それとも戦略的? 大幅価格引き下げで、PHV普及の道を探る一部改良 [CORISM]

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【トヨタ】2013/10/17

売れないなら、いっそのことプリウスすべてをPHVオンリーに!?

トヨタ プリウスPHV
 トヨタは次世代環境車であるプリウスPHVを一部改良して発売を開始した。

 プリウスPHVは、2011年11月にデビュー。プリウスをベースに大容量のリチウムイオン電池を搭載。このリチウムイオン電池は、外部から200Vの普通充電で約90分で満充電となる。この電力を使いカタログ値で26.4㎞のEV走行ができるプラグイン・ハイブリッドだ。電力が無くなると、通常のプリウスのようにハイブリッド車として走行する。

 すでに、日産がEVのリーフを発売。世界に先駆けた、画期的なクルマだ。しかし、走行距離の短さや価格が高いこと、充電設備費がかかるなどの理由で日産が思うほど売れていない。売れないといっても、累計3万台の販売台数を達成している。

 それに対して、プリウスPHEVは約20㎞程度の短い距離ではEVとして走行。長距離はハイブリッド車として走行できるため、走行距離の心配はなく、EVより現実的な次世代環境車として注目されていた。

 しかし、トヨタの期待値も高かったのだ、プリウスPHVは想像以上の販売不振に悩まされていた。そのひとつが、約20㎞というEV走行の短さにある。トヨタは、多くの顧客からデータを取った結果、ほとんどケースが約20㎞も走れば実用上十分だと説明した。それは、作る側の理屈であって、せっかくプリウスPHVを買う顧客の気持ちは、このEV走行距離では物足りないということのなのだ。

 例えば、日本のマーケットは4人家族であっても8人乗りのミニバンを好んで買う傾向にあり、クルマにおいては大は小を兼ねる的な感覚が強い。たった約20㎞しかEV走行できないPHVなら、当時の価格で88万円も高価で充電設備費も必要なPHVを買う理由が見当たらない。そもそも、ガソリンより電気が安いといっても、これほどの価格差をペイできるほどではなく、経済合理性も成り立たない。

 さらに、約20㎞しかEV走行できないので、長距離を走ると普通のプリウスとハイブリッド燃費もそう変わらなくなる。これに関しては、トヨタは真面目でプリウスPHVのハイブリッド燃費は31.6㎞/Lとし、通常のプリウスの30.4㎞/Lを超えている。プリウスPHVの優位性と差別化のために、ハイブリッド燃費を向上させているのだ。

 テレビCMなどで、61.0㎞/Lとアピールしているが、これはプラグインハイブリッド燃料消費率(複合燃料消費率)で、満充電したEV走行分を含んだ数値。多くの人が勘違いするが、充電分が無くなっても61.0㎞/L走るということではない。

 顧客側からしてみれば、見た目もほとんど一緒で変わり映えしないプリウスPHVに100万円近い金額をプラスすることさえ難しいのに、燃費も似たようなもので、安い電力を使うことでの経済合理性も担保できないのなら、プリウスPHVを買う理由というのが見当たらないというものだ。

 そんな状況に置かれたプリウスPHVを、トヨタは大幅値引きに出た。実際、日産リーフも価格を大幅に引き下げてからは、今までは好調になったという。まず、エントリーグレード「L」の価格を2,850,000円とした。価格引き下げ前は305万円だったので、20万円の引き下げだ。同様にSグレードを300万円、Gグレードを320万円とし20万円引き下げている。

 この価格でも、普通のプリウスSが232万円なので、価格差は68万円としている。さらに、補助金が25万円あるので、価格差は43万円となる。

 普通のプリウスと比べ、変わり映えのしない見た目にも手が入った。外装では、LEDイルミネーション付のリヤエンブレム*、新意匠のアルミホイール(センターオーナメント付)、クローム調加飾を施したサイドガーニッシュ*やアウトサイドドアハンドルなどを採用し、先進イメージをさらに強調している。

内装では、助手席インストルメントパネルアッパー部や助手席前アッパーボックス部、フロントカップホルダー部にソフトパッド表皮*を採用。そのほか、センタークラスターやドアスイッチベースに木目調加飾*を、エアコン吹き出し口に加飾*を施し、より一層、上質感を追求した。(*除くLグレード)

 今回の一部改良は、こういった表面的な部分だけではない。クルマとして基本的な部分も進化した。クルマの基本骨格であるボディは、従来のスポット溶接より溶接打点間のピッチを細かくすることができる工法「レーザースクリューウェルディング」を採用。この新技術によりボディ剛性を高め、振動や騒音を低減した。さらに、優れた乗り心地や高い操縦安定性を実現している。このいった改良は、トヨタの真面目さが表れている点。

 新型トヨタ プリウスPHVは、クルマとして確実に進化して若干買いやすくなった。しかし、増え続けるトヨタのハイブリッドラインアップの中で、大きく差別化することは今のままでは難しい。いっそのこと、プリウスは、ハイブリッドは無くして、すべてPHVにするくらい大胆に戦略にしないと売れないかもしれない。プリウスのひとクラス下になるアクアとの価格差もわずかなので、若干価格アップしてもリスクは少ないだろうし、すぺてをPHVにすればコストダウンも一気に進むだろう。

 プリウスは、ハイブリッド車というクルマの道を切り開いてきた。プリウスが道を開くことで、後に続くハイブリッド車がPHVへとシフトさせることも容易になるからだ。EVでは、インフラ含め、まだまだ不便。燃料電池車は、価格やインフラなど、しばらく時間がかかる。そう考えると、現実的な次世代環境車はPHVということになるので、トヨタのもつ力でパワーシフトしてしまうこともありだろう。

トヨタ プリウスPHV
トヨタ プリウスPHV
トヨタ プリウスPHV

トヨタ プリウスPHV

トヨタ プリウスPHV価格

■トヨタ プリウスPHV価格
・L 2,850,000円
・S 3,000,000円
・G 3,200,000円
・G“レザーパッケージ” 3,998,000円

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(レポート:CORISM編集部

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