日産スカイライン長期評価レポート Vol.2 伝統の走りの良さに加え、多くの先進技術が加わってプレミアム スポーツセダンとしての価値がアップした! [CORISM]

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2014/12/24

バイワイヤ式ステアリング、ハイブリッドシステムなど先進技術が集中投入された新型スカイライン

日産スカイライン
 13代目のV37系スカイライン は、2013年11月に発表され、晩秋に開催された東京モーターショー にも出展され注目を浴びた。ボディサイズはひと回り大きくなり、全幅はついに1.8mの大台を超えた。だが、背を低くしたことと絞り込みを強くしたことにより、先代よりコンパクト に見える。

 フロントマスクも凛々しく押しが強いデザインだ。プロポーションも低く構えた躍動感あふれるもので、逞しい。止まっていても、スポーツセダンとしての存在感が際立っている。

 さらに、先進的なメカニズムを積極的に盛り込んだ。筆頭は世界初のバイワイヤ式ステアリングのダイレクトアダプティブステアリング(DAS)である。ステアリングとタイヤを電気だけでつなげた先進技術だ。

 また、新型スカイラインは、ハイブリッド 車を主役に据えたが、これはエコ性能が高いだけでなくスポーツ性も飛び抜けて高い。そして、遅れて加わったのが2.0Lの直列4気筒DOHCターボだ。スカイラインとしては、6代目のDR30型RSターボ以来の4気筒ターボ搭載車が復活した。これは日本のファンには、うれしい配慮と言えるだろう。

日産スカイライン

スカイライン200GT-t

プレミアムにこだわった洗練されたインテリア

日産スカイライン

350GTハイブリッドインパネ

 ドアを開けて乗り込むと、インテリアも洗練度を高めていることが分かる。こちらも見慣れたT型ダッシュボードに丸形2連メーターの組み合わせだが、プレミアムに対して強いこだわりを感じさせるデザインだ。

 また、素材の質感が高められ、パネル自体も立体的な造形とした。フロントシートはサポート性に優れ、大柄な人でも最適なポジションを取ることができる。背は低くなったが、頭上にも余裕があり、圧迫感がない。

 リアも満足できる空間を確保しているから、リラックスした気分でロングドライブを楽しめる。大柄な人がドライバーズシートに座っても、リアシートは快適だ。膝元には握りこぶし1個分より広い空間が残っている。シート下への足入れ性は今一歩だが、海外のユーザーに向けて開発しただけに居住性はドイツ勢に負けていない。角度も適切だからロングドライブでも疲れにくかった。

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350GTハイブリッド フロントシート

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350GTハイブリッド リヤシート

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どのグレードにもパドルシフトが欲しくなるほど走りが楽しい350GTハイブリッド

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 日産 独自の1モーター2クラッチ方式のインテリジェントデュアルクラッチコントロールを採用する350GTハイブリッドは、3.5LのV型6気筒DOHCエンジンにモーターの組み合わせである。最高出力は225kW(306ps)/6800rpm、最大トルクは350Nm(35.7kg-m)/5000rpmだ。

 モーターはフーガのものよりバッテリーの瞬間出力とモーター出力をアップし、鋭い加速を実現した。モーターによるクルージング性能も高めている。ちなみにシステム最高出力は364psだ。

 瞬発力の鋭いモーターを組み合わせたパワートレーンは、とにかく力強い。アクセルを踏み込むと、レスポンスが鋭く、瞬時にトルクが湧き上がるモーターのアシストを実感できる。V型6気筒エンジンも軽やかに吹き上がるから、痛快な加速をたやすく引き出すことが可能だ。その気になれば7000回転まで使い切ることができ、滑らかさも群を抜く。タイプSPに装備されているパドルシフトを駆使すれば、ワインディングロードも愉しい。これは、全グレードに標準装備して欲しいところだ。

 慣れてくると、モーターだけでEV 走行することができる。EV走行の領域は思いのほか広く、エコランを心がければ100km/hでもエンジンは始動しない。エコモードでアクセルを踏みすぎると注意喚起として、アクセルの踏力が重くなるエコペダルも威力を発揮した。燃費向上には、効果絶大だ。

 モーター走行しているときとエンジンが回ったときのオン/オフの切り換えタイミングが合わない場面も、わずかに感じる時もあるが、ほとんどのシーンで、滑らかな走りを楽しむことができた。静粛性も高いからパッセンジャーも快適だ。

「剛」のイメージの200GT-t。刺激的なフィーリングの2.0Lターボエンジン

日産スカイライン
 2014年5月に加わった200GT-tは、メルセデス・ベンツ との提携によって供給を受けたパワーユニットを搭載する。2.0Lの直列4気筒直噴ターボで、基本設計はベンツのCクラスと同じだ。最高出力は155kW(211ps)/5500rpm、最大トルクは3.5Lのガソリンエンジンと同等の350Nm(35.7kg-m)/1250〜3500rpmと発表された。トランスミッションは電子制御7速ATだ。ちなみにJC08モード燃費は350GTハイブリッドが18.4km/L、200GT-tは13.6km/Lである。

 350GTハイブリッドの走りは「柔」のイメージだった。これに対し200GT-tは「剛」のイメージだ。エンジンのフィーリングは、加速を楽しむパワーとトルクの出し方をしている。応答レスポンスは鋭いし、ターボのアシストも力強い印象だった。トルクがスッと立ち上がり、3500回転あたりからは、パンチ力が加わってくる。とくに、スポーツモードを選ぶと刺激が増す。だが、高回転の伸び感と回したときの静かさは350GTハイブリッドに差をつけられた。

驚くほどクイックなバイワイヤ式ステアリングのDAS。不快なキックバックもない!

 ハンドリングは、予想した以上にスポーティな味わいだ。とくに4気筒エンジンを積む200GT-tは鼻先が軽く感じられる。スタビリティ能力は際立って高いが、気持ちよくノーズが入り、軽やかに狙った方向を向く。

 V型6気筒エンジンを積み、バッテリーも加わる350GTハイブリッドは、切れ味の鈍さを嫌ってかDASを採用した。また、ドライブモードセレクターも採用して、ハンドリングなどを好みの味に変えられるようにしている。

 DASは、驚くほどクイックな操舵フィールだ。ステアリングの操作は、最小で済むから駐車もラクだった。それ以上に効果が見て取れるのは、ワインディングロードの走りである。ちょっと切っただけで狙ったラインにたやすく乗せることができ、路面からの不快なキックバックもまったく感じない。だから、路面の継ぎ目の段差も上手に乗り越えて行く。乗り心地も200GT-tの一歩上を行く。とくに、17インチタイヤを履くタイプPは好印象だ。路面の凹凸をしなやかに受け流す。このDASは、やや遅れて200GT-tにもオプションで装着ができるようになった。

 19インチタイヤを履くタイプSPは、タイトコーナーでも路面に吸い付いたかのような安定した走りを楽しむことが可能だ。最小の舵角で狙ったラインを難なくトレースすることができる。スポーツモードを選ぶと、スポーツカーのように俊敏な走りを楽しめるが、慣れないと限界域が分かりづらい。

 また、今まで乗っていたクルマの感覚と違うので、慣れるまでは多少の違和感を覚えた。これだけスポーティ度が高いなら、サスペンションの減衰特性を換えるなどの電子制御メカニズムが欲しくなる。

日産スカイライン

ツインディスプレイ(上画面8インチワイド&下画面7インチワイド)

日産スカイライン

ドライブモードセレクターを操作すると、車両の設定状態がモニターに映し出され自分仕様に設定が可能

日産スカイライン

手前のレバーがドライブモードセレクター。これを操作し、新型スカイラインのキャラクターを自在に変更できる

安全装備も充実。走行パフォーマンスの高さは同じ。予算重視なら200GT-t、上質さ重視なら350GTハイブリッドか?

日産スカイライン
 全方位運転支援システムを採用したことも特筆できる魅力だ。前方衝突予測警報や後側方車両検知警報、エマージェンシーブレーキ、インテリジェントペダルなどを採用し、あらゆるシーンで人を守ろうという姿勢を見せた。自慢のアラウンドビューモニターも重宝する。ただし、メルセデス・ベンツのCクラスやスバルのアイサイトと比べると、衝突回避支援システムは、今後の熟成に期待したい。

 V37系スカイラインは、素性のいいスポーツセダン だ。気持ちいいハンドリングだから、運転するのが楽しい。運転していて楽しいというのは、スカイラインが代々受け継いでいる重要な要素。13代目スカイラインにも、それは十分に生かされている。ちょっと荒削りなところもあるが、手が届きやすいのは4気筒エンジンにターボの200GT-t。上質な大人のスポーツフィーリングと、燃費のよさを考えると350GTハイブリッドがお薦めである。ハイブリッド車は、リセールバリューも高いだろう。

日産スカイライン価格、燃費、スペックなど

■新型日産スカイライン350GTハイブリッド価格
●2WD
・350GT HYBRID  4,624,560円
・350GT HYBRID Type P 5,002,560円
・350GT HYBRID Type SP 5,415,120円
●4WD
350GT FOUR HYBRID 4,905,360円
350GT FOUR HYBRID Type P 5,283,360円
350GT FOUR HYBRID Type SP 5,695,920円

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代表グレード 日産スカイライン 350GT HYBRID Type SP
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,800×1,820×1,440mm
ホイールベース[mm] 2,850mm
トレッド前/後[mm] 1,535/1,560mm
車両重量[kg] 1,800㎏
総排気量[cc] 3,498cc
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] 225〈306〉/6,800
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 350〈35.7〉/5,000
モーター最大出力[kw(ps)] 50〈68〉
モーター最大トルク[N・m(kg-m)] 290〈29.6〉
ミッション 7AT
タイヤサイズ 245/40RF19
JC08モード燃費 17.8km/L
定員[人] 5人
税込価格[円] 5,415,120円
発表日 2013年11月11日
レポート 片岡英明
写真 編集部

■新型日産スカイライン200GT-t価格
・200GT-t 3,834,000円
・200GT-t Type P 4,212,000円
・200GT-t Type SP 4,568,400円

代表グレード 日産スカイライン 200GT-t Type SP
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,800×1,820×1,450mm
ホイールベース[mm] 2,850mm
トレッド前/後[mm] 1,535/1,555mm
車両重量[kg] 1,680㎏
総排気量[cc] 1,991cc
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] 155kW(211PS)/5500rpm
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 350N・m(35.7kg-m)/1250-3500rpm
ミッション 7AT
タイヤサイズ 245/40RF19
JC08モード燃費 13.0km/L
定員[人] 5人
税込価格[円] 4,568,400円
発売日 2014年6月5日
レポート 片岡英明
写真 編集部

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