【トヨタ 新型 プリウス(プロトタイプ) 新車試乗記】あまりの完成度に言葉も出ない・・・大岡編集長も完敗! 3代目プリウスは、名実共にトヨタの看板車種になった! [CORISM]

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【トヨタ】2009/03/30

「新型どうですか?」と聞かれ、ちょっと戸惑う

新型トヨタ プリウス(プロトタイプ) テストシーン
 新型トヨタ プリウスのプロトタイプに試乗した。試乗し終わった後、トヨタの開発陣に「新型プリウスどうですか?」と聞かれる。その度に正直言って困った。それは、トヨタ以外は唯一無二の存在であるプリウスだけに、他のメーカーのクルマと比較して応えることができないからだ。インサイトは? と、思われるかもしれないが、どちらがいいのか悪いのか、という話は別としてプリウスと比べてしまうとインサイトは、アイドリングストップがちょっと進化した程度で、同じハイブリッドというジャンルながらまったく違うクルマだ。そうなると、ベンチマークとなるのは旧型のプリウス以外ない。当然、新型は旧型に対してすべての面において進化させることを目的に作るわけだから、新型が圧倒的にいいのは当たり前である。
 とくに良くなったと感じた点は、走りの質感と音&振動。走りに関しては、旧型プリウスはお世辞にも走るのが楽しいと感じることはほとんどなく、元気に走ろうとするとブワブワの足に鈍感なハンドリングで「オレは燃費重視で行くぜ!」と宣言してしまいたくなるほどだった。
 ところが、新型は想像以上によい。テストコースではアクセル全開!タイヤはキュケェー!!と叫びを上げるような走りをしても、それなりに走ってくれる。それなりというのは、スポーティではないものの、そんな走りをしてもクルマも音を上げないと言う意味だ。終始慣れなかったのが、回生ブレーキ。ブレーキの踏力に比例したリニアな効きではないため、ストレートからフルブレーキングで飛び込むようなアプローチはクルマの姿勢を作るのが難しかった。フツーに乗っても快適で、とくに気になるような部分は感じない。
 パワーも1.5から 1.8リッターに。モーターも50kwから60kwへ。システムの合計出力も113psから136psへと大きく進化。とくにアクセルを踏んだ瞬間のトルクが強烈で、スポーツ走行中にラフにアクセルを開けると、瞬時にトラクションコントロールが点滅するほど。今回の排気量アップは、低速トルクを強化して高速走行時のエンジン回転数を下げ実用航続燃費をアップさせようという狙いもある。
 音と振動に関しては、さすがトヨタといった感じで突っ込みどころがない。インサイトは元気いっぱいの音と振動でドライバーにエンジンがかかっていることを十分に意識させてくれたが、新型プリウスはいつエンジンがかかったのか分からないほど。80km/h程度以下なら、エンジンがかかっているのも分からないくらいだった。
 EV走行ボタンを押すと 55km/hまでEV走行してくれるが、ラフにアクセルを開けると解除される。バッテリーの充電量によるのだが、数キロにもわたりEV走行ができるのがプリウス最大の強み。住宅街やちょっとした路地、渋滞路など日常でEV走行が可能。EV走行している瞬間が「プリウス買ってよかったぁ」と思わせるポイントを評価しよう。

【トヨタ 新型 プリウス(プロトタイプ) 新車試乗記】新型プリウスを満喫中!のCORISM大岡編集長

すべてカンペキな新型プリウスの中で、唯一の難点を発見!

新型プリウス唯一の難点!? インパネ周り
 気になる価格だが今のところ205万円説が有力視されている。ホントかなぁ、と思っていたものの、プラットフォームはオーリス系を使用するなど、最初からコストダウンを見込んだ設計がされている。実はこのオーリス系のプラットフォームは、なんとエスティマなどの2トン級ボディまで対応するため、ちょっと重い。燃費と重さはトレードオフ関係にあり重要な要素。そこをあえてこの重いプラットフォームを使う意味は、コストダウン以外にはないという明確な意思を感じた。ボディ設計者に重いボディで頑張ったね、と声をかけたところ満面の笑みで「他のところでがんばりました!」と答えてくれた。
 価格に関係する部分で終始気に入らなかったのが、センターメーター。視線移動が少ないから見やすい、というのだが、どうもセンターメーターは見にくい。今回のものはセンターコンソールにあった大型のモニターも廃止され、センターメーター内に置かれている。これがとにかく見にくい。コントラストもハッキリしていなく、絵柄も小さいのでエネルギーモニターの状況がひと目で理解できない。絵柄の演出も芸が無く、この部分だけは旧型プリウスのほうが100倍ワクワクさせてくれた。こういうクルマには、演出も重要だということが分かっていないのだろう。
 まあ、カラフルでもなくコントラストも弱く見にくく、演出力もないメーターだが、センターメーターにしてコストダウンが図られたからこそ車両価格が205万円なんです、といわれたら返す言葉もない。この圧倒的に優れたハイブリッド車が205万円で買えるのだから、この部分は目をつぶるしかないのか・・・。この部分だけは、トヨタのカイゼンに期待したい。
 かなりメーターひとつでケチをつけたが、正直この新型プリウスが205万円で買えるのなら、素晴らしい企業努力だと思う。初期は損を覚悟で販売していたものを 12年かけてじっくりと育て、多くのユーザーが購入できる金額まで成長させたこと。ホンダ以外の他社が「なにを無駄なことを」と追随しないような状況下で、諦めずひたすらハイブリッド車を磨きぬいていったことが、ついに世界一の自動車メーカーに押し上げた。今やトヨタの看板車種はカローラやクラウンではなく「プリウス」なのだ。
 今頃慌ててアイドリングストップ技術だ燃費向上技術だといっても、もはやプリウスは12年前から製品化している。プリウス205万円、多くのメディアがプリウスVSインサイト大戦争なんて大騒ぎしているが、これが正解ならホンダ以外、まったく関係ないような自動車メーカーが逆に危機である。不況+205万円プリウスショックでひとつやふたつの自動車メーカーが消えてしまうかもしれない。

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(レポート:大岡 智彦

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