【日産 新型 フェアレディZ(プロトタイプ)試乗記】”オーラ”出まくり!NEW Zはクルマ好きの希望の光だ![CORISM] [CORISM]

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【日産】2008/12/13

リアルスポーツカーのオーラが見えた!

 ふっ切れたと直感した。テストコースで新型日産フェアレディZのプロトタイプを目の前にしたときのファーストインプレッションだ。
 先代となる Z33フェアレディZは、ボクにとって非常に中途半端なモデルであった。走りには切れがなく、曲がるという運動性能はそれほど高くない。また、スポーツカーでないのだとしたら、ラグジュアリーGTカーのように乗り心地が良いわけでなく、タイヤやエンジンのサウンドも耳障り。毎年進化させます! と湯川さん(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)はおっしゃっていたが、なにを進化させているのかイマイチ分からない状態だったように思える。リアルスポーツカーなのか? それともラグジュアリー・スポーツなのか? すべてにおいて迷いがあった。

 ところが、Z34型フェアレディZをひと目見ただけで、新型フェアレディZはリアルスポーツカーであるというメッセージが、その佇まいから伝わってくる。精神論的な話で説得力は無いのだけれど、ボクは本当に素晴らしいスポーツカーにはオーラがある。そう思っている。そのオーラとは、他を寄せ付けない孤高な存在だったり、その場の雰囲気を一瞬に変える存在感だったりする。新型Zには、そんなオーラを見えた。「オレは速い。オマエにオレが操れるのか?」そんな問いかけが聞こえてくるようだったと評価したい。
 「すべては走りのために」。新型フェアレディZのデザインコンセプトだ。その他、色々なデザインへのこだわりを谷中さん(チーフ・デザイナー)は、ボクに伝えてくれた。だけど、目の前に置かれた新型Zの前では、広報用に用意された言葉は陳腐化する。「おおっ、キター、カッコイイ!!」と叫ぶボク。まるで、子供。ジャーナリストとしても失格かもしれない。谷中さんも少々呆れ顔である。でも、ハートに刺さるってそんなものではないだろうか。

【日産 新型 フェアレディZ(プロトタイプ)試乗記】NEW Z リアビュー

想像以上!クイックなハンドリングは高評価!

 走りへの期待は、デザインだけですでにMAX状態。テストコースへと、飛び出す。7000回転のレブリミットまで、イッキに回し336馬力を後輪に伝える。ガァゴォーという少々荒っぽいエンジン音を響かせながら、シフトアップ。最初のコーナーへ。シンクロレブコントロールってのが付いているので、シフトダウンも楽チン。クラッチを蹴るようにしてシフトダウンをするだけで、自動的に「ブォーン」と一発アクセルをあおってくれるので、ヒール&トゥなんて必要なし。右足はひたすらブレーキ操作のみに集中。しっかりと、それもスムースに前輪に加重をかけた後、ステアリングを切る。アララ・・・、想像以上に早くノーズがインを向き、自分の思っていたラインよりクルマ1台分くらい内側のラインを描く。先代Zでは、あり得ないほどのクイックなハンドリングだ。驚きは続く。コーナーの立ち上がりで、アクセルをオン。普通のクルマやダメなスポーツカーは、ドンドンと外側に膨らんでいくラインを取る。しかし、新型Zは後輪にパワーをかけても前輪がイン側に少し巻き込むように進むので、思っていたより早くアクセルを開けることができる。早くアクセルを開けられるということは、つまり、速いということだ。ちなみに、2〜3速を使うような中低速コーナーでラフにアクセルを開けると、簡単にトラクションコントロールが作動中しているという合図の黄色いコーションランプが点滅するほどパワフル。横滑り防止装置VDCをオフにすれば、腕に自信のある人限定だが簡単にドリフトなど新型 Z振り回して走ることができると高評価なのだ。

 ところで、自動車メーカーのテストコースは、サーキットではないので試験のために色々な凹凸が路面に付けられている。驚いたことに、新型Zはそんな凹凸をかなりのスピードで通過しても大きく挙動を乱すことはなく、サスペンションがしっかりと路面を捉えていることも確認できた。

【日産 新型 フェアレディZ(プロトタイプ)試乗記】エクステリア 画像

Zの伝統!? 3連メーター…カッコ悪くないですか?

 ホットな走りを堪能したあとは、高速周回路を180km/hのクルージング。速度リミッターがもどかしい。新型Zのパフォーマンスにしてみれば、 180km/hも流して走っている程度。直進安定性が云々というほどのレベルには達しておらず、とっても快適。この速度域では100mm短くなったというホイールベースに対するネガな部分は、まったく感じなかった。
 冷静になってメーター回りを見ていると、エクステリアでは絶賛できたデザインだがインテリアはどうもシックリこない。とくに、ガックリときたのがセンターコンソール上部に鎮座した3連メーター。Zの伝統だというが、カッコ悪くないですか? チープで子供っぽいというか・・・。一番左のデジタルメーターが、とくに個人的には納得いかない部分。400万円オーバーのクルマの時計とは、とても思えない。

 全世界的な自動車販売不振が続く中デビューした新型フェアレディZ。時代が好景気なら、爆発的に売れる魅力が詰まったスポーツカー。日本の自動車メーカーのほとんどが、スポーツカーの生産をしていない今、新型ZにGT-Rとスポーツカーをリリースする日産の存在意義は高い。
 ミニバンと軽自動車しか売れない日本。そんなクルマしか触れることのない若者は、恐らく今後さらにクルマに興味が無くなっていくだろう。と、なると、日本の自動車文化は死んだも同じ。ミニバンと軽自動車が実用車ならば、実用車に夢や希望は必要ない。あるのは、目の前にある現実だけ。寂しすぎる現実だが、絶滅危惧種の「クルマ好き」にとって、Z34型フェアレディZは、落日な日本の自動車文化にわずかな希望の光を放つ明星かもしれないと評価しよう。

【新型 日産 フェアレディZ試乗記】 インテリア インストルメントパネル 画像
【新型 日産 フェアレディZ試乗記】 インテリア インストルメントパネル 画像
【新型 日産 フェアレディZ試乗記】 エンジン 画像

代表グレード Version ST(6速MT)
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4250x1845x1315mm
車両重量[kg] 1520kg
総排気量[cc] 3696cc
最高出力[ps(kw)/rpm] 336ps(247kW)/7000rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 37.2kg-m(365N・ m)/5200rpm
ミッション 6速MT(シンクロレブコントロール付)
10・15モード燃焼[km/l] 9.5km/L
定員[人] 2人
税込価格[万円] 435.75万円
発売日 2008年12月1日
レポート 大岡 智彦

(レポート:大岡 智彦

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