【BMW 3シリーズ 試乗記】日本市場を重視! マイナーチェンジで使い勝手が大幅UPした[CIRISM] [CORISM]

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【BMW】2009/01/04

日本市場向けにボディやナビを改良

BMW 3シリーズ ツーリング フロント
 BMWの主力モデルとなる3シリーズは日本でも好調な売れ行きを続けてきたが、ひとつだけネックとなる要素を持っていた。ボディの全幅が1815mmと 1800mmをわずかに超えていたため、入れないタワーパーキングがあるとか、立体式の駐車場で車庫証明が取れないなどの問題が発生していた。
 ボディそのものは完全に1800mm以内に入っているのだが、ドアの把手部分がわずかに出っ張っているため、カタログ上の数値が1815mmになってしまい、上記のような問題が発生していたのだ。
 把手だけの問題で、しかもわずか15mmなら何とかなるだろうということで、BMWの日本法人からはドイツの本社に対して強い要望を出したという。たいていの場合はこうした要望は受け入れられないもの。外国の自動車メーカーにとって日本の市場はさほど大きなものではなく、法規対応のような止むを得ないものを除けば、日本向けに専用設計するなどというのはあり得ないことなのだ。
 BMWは今回、それをあえてやってきた。ドアの把手は、最近では単純な把手ではなくなっている。キーやロックの電子化が進む中で、ドアの把手の内部にはさまざまな電子部品や配線が入っている。なので簡単に形状を小さくすれば良いというものではないのだが、いろいろな工夫をして把手の形状を変更し、ボディの全幅を 1800mmに抑えてきた。結果的に、ドアと把手との間隔がやや狭くなってしまったが、それでも日本向けに専用の設計をしてきたことは評価していい。
 今回のマイナーチェンジではほかに、カーナビを日本専用仕様にして機能を大幅に向上させると同時に、iDriveのコントローラーの操作性を向上させている。いろいろな意味で日本向け仕様が充実したのが今回のマイナーチェンジである。
BMW 3シリーズ セダン フロント

マイナーチェンジ最大のポイントは全幅の変更だ。とはいえボディそのものに変更はなく、ドアノブの形状が変更されただけだ。

BMW 3シリーズ セダン リヤ

いかにもBMWらしいスポーティな雰囲気は健在だ。リヤコンビランプのデザインなどが変更され、スタイリッシュさを感じさせる。

BMW 3シリーズ ツーリング リヤ

ワゴン版のツーリングもスポーティな雰囲気。ラゲッジの容量よりもデザインを優先させた印象はあるが、使い勝手は文句なし。


BMW 3シリーズ フロントマスク

BMW伝統のキドニーグリルをはじめ、BMWらしさにあふれたフロントマスク。バンパー形状なども、よりスタイリッシュになった。

BMW 3シリーズ ツーリング リヤコンビランプ

リヤコンビランプのデザインも変更された。ウインカーはセダン、ツーリングともにLED式を採用し視認性にも優れている。

BMW 3シリーズ 17インチタイヤ&ホイール

モデルにより16インチ、または17インチ(写真)仕様となる。どちらもBMWらしいダイレクト感のあるハンドリングを楽しめる。

320iもBMWらしさいっぱいの走り

BMW 3シリーズ ツーリング フロント
 新しい3シリーズのうち最もベーシックなグレードで売れ筋グレードでもある320iとBMWらしい軽快さのある325iツーリングの2モデルに試乗した。
 320iは3シリーズを代表するモデルで直列4気筒の2リッターエンジンを搭載する。4気筒というのがやや物足りなさを感じる部分でもあるが、このエンジンにはダブルVANOSやバルブトロニックなどの最新の制御技術が盛り込まれていて、156ps(115kW)/20.4kg- m(200N・m)というクラスでもトップレベルの動力性能を発揮するほか、吹き上がりのスムーズさというか、アクセルワークにダイレクトに反応するレスポンスの良さを備えている。吹き上がりの気持ち良さはいかにもBMWらしいものだ。
 それ以上に320iに乗って感じるのは走りのバランスの良さだ。例によって前後の重量配分がほとんど50:50に設定されていて、バランスの良い走りを感じさせる。しっかり感にあふれたボディは乗り心地や静粛性にも貢献しており、ベースモデルながらこれで十分という印象になると評価できる。
BMW 3シリーズ 2リッター直4エンジン

全幅が狭くなったとはいってもドアノブの変更だけなので、室内の広さに変わりはない。ナビも日本仕様に特化したものとなった。

BMW 3シリーズ ツーリング フロントシート

シートの出来は非常に良く、サポート性も十分で、長距離ドライブでも疲れにくい。本革の手触りも良く、車格に見合った質感だ。

BMW 3シリーズ ツーリング リヤシート

リヤシートは十分な広さが確保されている。中央にはエアコンの吹き出し口も設置されており、とても快適なドライブが楽しめる。

6気筒ならではの魅力を持つ325i

BMW 3シリーズ フロントシート
 325iツーリングは、直列6気筒の2.5リッターエンジンを搭載する。こちらもバルブトロニックなどの最新制御技術が盛り込まれるほか、マグネシウム合金やアルミ合金を採用することで軽量化を図るなど、いろいろな意味で進んだエンジンに仕上がっている。218ps(160kW)/25.5kg- m(250N・m)のパワー&トルクは十分な実力である。
 吹き上がりのスムーズさは6気筒らしいスムーズさで、320i以上に気持ち良い吹き上がりが味わえる。低速域でのトルク感にも不満はないが、スムーズに吹き上がったときのパワーフィールはさらに気持ち良いもので、クルマを走らせていることの実感がひしひしと伝わってくる。
 直列6気筒エンジンは、トヨタや日産が作らなくなったことで、今ではまともに開発を続けているのはBMWくらいになった。GMのSUV系の車種やボルボS80などに例外的に搭載されているのが目立つくらいだ。なのでマイナーチェンジの発表のために来日したBMW の開発責任者に、いつまで直列6気筒エンジンを作り続けるのかと聞いたところ、BMWのコンセプトに合致した直列6気筒はいつまでも作り続けるとの答えが返ってきた。その回答を実感できる走りでもあったと評価していい。
 325iにはオプションのアクティブステアリングが装着されていた。車速に応じてステアリングのギア比が変わるもので、ロックtoロックはわずか1.8回転というクイックさ。低速では小さなステアリング操作できびきびと向きを変えるので、パイロンスラロームのような走りをすときにもきちんと応じてくれる。高速では適度なギア比に変わり、安定感のある走りを実現する。
 試乗したのがツーリングだったので、後輪荷重がやや重くなっていたが、それでも前輪の780kgに対して後輪が830kg。セダンならほとんど同等になるわけで、前50:後 50に近い重量配分ならではの走りを楽しむことができる。
BMW 3シリーズ 3リッターターボ直6エンジン

320iは直4、その他のモデルは直6を搭載する。4気筒でも十分な走りは味わえるが、よりBMWらしさを求めるならやはり直6がオススメ。

BMW 3シリーズ シフトレバー

ミッションはマニュアルモード付きの6速AT(写真)を搭載し、スポーティな走りが楽しめる。一部のグレードは6速 MTも用意される。

BMW 3シリーズ メーター

メーターのデザインはいかにもBMWらしい雰囲気だ。燃費などの情報が表示される中央のディスプレーはとても見やすい。


BMW 3シリーズ セダン トランク

セダンでも十分なラゲッジ容量が確保されている。トランクスルー機構も備えており、長い荷物の積み込みも可能だ。

BMW 3シリーズ ツーリング ラゲッジ

ツーリングのラゲッジは開口部も大きめで、使い勝手はとてもいい。大きなものや重い荷物も容易に積み下ろしが可能だ。

BMW 3シリーズ ツーリング ラゲッジ

リヤシートを倒せば驚くほどのスペースが現われる。かなり大きな荷物も余裕で積み込めるので、キャンプなどにも便利だ。

価格設定は高めだがその値打ちはある

BMW 3シリーズ ツーリング テールゲート
 BMW3シリーズの良さは改めて確認できたが、残念なのは価格設定が高めであること。320iの本体価格は445万円だが、試乗車には74万円ほどのオプションが装着されていて、520万円弱の価格になっていた。ハイラインパッケージだけに絞れば30万円のオプションですむので、オプションを上手に選ぶことが必要だ。
 325iツーリングは555万円の本体価格。試乗車には約100万円のオプションが装着されていて、650万円を超える価格になっていた。本革シートとサンルーフを除けば半分になるので、これもオプションの選択を良く考えて買うべきクルマと評価していい。
BMW 3シリーズ 走り
BMW 3シリーズ 走り
BMW 3シリーズ 走り

代表グレード BMW 325i
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4540×1800×1440mm
車両重量[kg] 1510kg
総排気量[cc] 2496cc
最高出力[ps(kw)/rpm] 218ps(160kw)/6500rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 25.5kg-m(250N・m)/4250rpm
ミッション 6速AT
10・15モード燃費[km/l] 9.3km/l
定員[人] 5人
税込価格[万円] 535.0万円
発売日 2008/11/13
レポート 松下宏
写真 佐藤靖彦

(レポート:松下 宏

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