最新の自動ブレーキ、予防安全装備装着車で暴走を回避?「こうすれば高齢者事故は減る!」高齢者ドライバー予備軍自動車評論家の回答は? その4

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2019/07/07

高齢者事故

 

最新のクルマなら“暴走”リスクは大幅に低減する

クルマの安全性能は年々進化していて、技術は先進緊急ブレーキ(自動ブレーキという言い方が一般的だが不正確だ)から自動運転へと進もうとしている。まあ、自動運転の時代はそう簡単にはやってこないが、最新の安全装備を備えたクルマなら、“暴走”リスクは大幅に低減する。

まず、前後に障害物があるとき、その方向に進もうとすると、アクセルを緩めて発進しないようにし、同時に警報で知らせてくれるシステムが採用されている。これを採用したクルマに乗れば、コンビニの駐車場から動き出そうとしてコンビニの中に突っ込むなどという事故はほぼなくなる。

ただ、この機構もアクセルを強く踏み続けると、ドライバーの意志を優先させてクルマが動き出すから、アクセルペダルに対する反応がなくなり、警報まで発せられたら、まずはアクセルを緩めて落ち着いて前後の安全を確認することである。

前方にクルマや人などがいるときに、警報を発してブレーキを制御する先進緊急ブレーキも、“暴走”の低減はともかく事故を低減するのにとても有効な機能である。

当初は簡易型の先進緊急ブレーキが多く、作動条件の制約が多かったり、あるいは物だけが対象で人間を対象としないものも多かったが、最新のクルマでは広い速度域をカバーして夜間に人間も見分けるような高度なシステムが一般的になっている。なるべく新しい仕様の安全装備を採用したクルマを選びたい。

クルマは高額商品なので簡単に買い換えることは難しいが、機会と予算に余裕があるなら、可能な限り最新仕様の安全装備を備えたクルマに乗るようにしたい。

 

 

“暴走”防止装置は有効か?

高齢者の“暴走事故”が増えたのを受けて、最近はカー用品店などでさまざまな暴走防止装置なるものが売られている。たいていは数万円から20万円程度の価格で、比較的容易に取り付けてもらうことができ、“暴走事故”防止に効果があると宣伝されている。

安くても200万円以上の予算が必要になる新車を買い換えることはできないが、比較的低価格で有効な暴走防止装置が手に入るならうれしいと考える人は多いかも知れない。でも待ってほしい、暴走防止装置が本当に良いものかどうか、疑問の余地が大きいからだ。

暴走防止装置で最も有名なのは「ナルセペダル」だ。開発されたのは恐らく20年以上も前のことだと思う。私もかなり以前に少しだけ装着車に試乗したことがある。

「ナルセペダル」はアクセルペダルとブレーキペダルをひとつにまとめたような方式のもので、ひとつのペダルをアクセルとブレーキとして操作するような感じになる。

ブレーキをかけるときには、ペダルを真っ直ぐに踏み込み、アクセルを操作したいときには右足をさらに右側にひねるようにずらし、右横に設けられたペダルに相当する部分を押すような形にするものだ。

アクセルとブレーキのペダル操作が全く違うものになるため、ブレーキだと思ってアクセルを踏み込む可能性はかなり低くなる、というかほとんどなくなる。事故を避けようとして反射的にペダルを踏み込むと、そのときにはアクセルではなくブレーキを踏んでいるので、踏み違いが発生しにくい。このようなことから、一定程度に優れモノであると思う。

ただ、実際に試した経験からすると、ブレーキはともかくアクセル操作には何とも違和感があって短時間の試乗では慣れなかった。

 

本当に効果的なら、自動車メーカーが採用するはず?

ナルセペダルの価格は試乗した当時で20万円くらいした記憶があるが、これが本当に良いものなら、多くの自動車メーカーが採用しているだろう。メーカーが採用しないのは、多くのユーザーがさまざまな使い方をしたとき、本当に良いとの確証が得られなかったからだと思う。自動車メーカーはさまざまな基準や条件を設け、安全性を追求しているが、それに合致しなかったのだ。

また、1台当たり20万円もの価格アップになるのでは自動車メーカーとしてもおいそれと採用できるものではない。量産すれば安くなるにしても、費用対効果の面でも十分とはいえなかったのだと思う。

今は、ナルセペダル以外にもいろいろな商品が販売されている。一部のテレビ局などではそれらを紹介しているが、最もまともな商品と思われるナルセペダルでも微妙。それ以外の商品は、同様だと思う。

ほかの商品については自分で試していないので何とも言えない部分があるのは認めるが、いずれにしてもナルセペダルと同様、本当に良いものであるなら自動車メーカーが採用しているはず。メーカーが採用しないのは、効果、実用性、操作性、耐久性、コストなど、いろいろな部分で問題があると判断されたからだろう。

 

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東京都は“暴走”防止装置の効果をどう判断するのか?

にもかかわらず、東京都では購入が各種の“暴走事故”防止装置を購入するときに一定の補助(9割)をするなどと言い出した。本当に安全確実な“暴走事故”防止装置をどのように認定するつもりか知らないが、場合によっては怪しげな商品の購入に対しても補助金が支払われることになってしまう。

便乗商法のような形で販売されている防止装置には注意が必要だ。防止装置の安全性や確実性などを担保するため、公的機関による認証などが必要だと思う。

 

“暴走”を始めたクルマを止められるのか

クルマが“暴走”を始めたとき、それを止めるのは相当に難しい。よほど余裕があるときでないと止められないとは思う。というのは、ドライバー自身はブレーキを踏んでいるつもりであり、必死でクルマを止めようとしていて、アクセルを踏んでいるなどとは夢にも思っていないからだ。

よほど広い場所で、前後左右に大きな空間があるような状況なら、一度ペダルから足を離してみようと考えることもできるが、周囲にクルマや自転車や人がたくさんいる市街地での走行では、そんな余裕は得られない。たいていはブレーキをさらに強く踏み続ける結果になってしまう。

もしも、少しでも余裕があるなら、一度ペダルから足を離すことを試してみると良い。ブレーキだと思ってアクセルを踏んでいたのなら、ペダルから足を離せば確実に減速する。

 

 

暴走したらニュートラルに?

もうひとつの方法は、シフトレバーを操作してニュートラルにすることだ。ニュートラルにすれば、ブレーキをかけたような減速はしないまでも加速はしなくなり、走行抵抗によってだんだんに速度が落ちるから、その後に落ち着いた対応ができる。

これはドライバー本人でも助手席の乗員でも、操作できる人がやれば良い。ふだんから夫婦でドライブしているような人なら、緊急時に助手席の乗員がこうした対応をできるように操作法を確認しておくと良いだろう。

状況によっては、サイドブレーキを引くことも考えられるが、これはあまり推奨しない。そもそも最近ではハンドブレーキ方式のサイドブレーキを採用するクルマが少なくなっていて、可能な車種があまりないのがひとつ。

また助手席の人がサイドブレーキを引けるような状況だとしても、本当に引いたらスピンモードに入ってしまうことも考えられる。サイドブレーキだけで止まれるような超低速時ならともかく、“暴走”が始まったような状況でサイドブレーキを引くのはかえって危険だ。

<レポート:松下宏>

 

 

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