エコカー補助金、ユーザー不在が目立つ
根本的に話の筋が違うのは、消費税と併せて二重払いになる自動車取得税、暫定税率の廃止によって課税根拠を失った自動車重量税を存続させながら、減税を延長し、補助金を復活させること。矛盾が生じているのは明らかだ。
国としては基本的には自動車ユーザーから多額の税金を徴収したいが、東日本大震災、タイの洪水、円高の長期化と続き、日本の自動車産業は疲弊している。多額の税金を徴収する手段を温存しながら、短期的に減税と補助金をダブルで設け、内需の拡大を支援することになった。従って減税、補助金ともに、ユーザーの利益を優先した結果ではない。あくまでも業界に向けた支援策。施行の仕方を見ても「ユーザー不在」が目立つ。
ドタバタ補助金復活で、不利益を受けたユーザーも多い
補助金の概要が明らかになった12月20日の登録分から補助金の交付が受けられることになったので、混乱を招いている。新聞などの報道でユーザーが補助金の復活を知ったのは21日以降。19日に登録された車両のユーザーは、1日違いで補助金を逃すことになった。もっと早い時期に補助金の概要が発表されていれば、契約と登録を遅らせて補助金を受け取るか、交付を諦めて早く納車するか、という選択が可能だったろう。12月20日の直前に登録された車両のユーザーは不利益を被った形になり、セールスマンは「自動車業界にいながら補助金の復活を知らなかったのか」と問い詰められた。
補助金額は、登録車(小型&普通車)が10万円、軽自動車は7万円。最近は登録車も低価格化が進み、値引き額も減った。10万円の補助金額は大きい。軽自動車では、7万円の交付を受ければ、購入時に支払う自賠責保険料、税金、各種の代行手数料などをまかなえてしまう。10万円/7万円ともにクルマを買う時の予算を大きく左右するので、慎重に取り扱うべきだった。
とても面倒な補助金運用
4月以降に施行予定の減税は、平成27年度燃費基準の達成が条件。平成22年度燃費基準プラス25%は含まれない。そして平成27年度燃費基準は、平成22年度に比べて格段に厳しいから、4月以降は減税は受けられず、補助金のみの交付が可能な車種が増える。
注意したいのは、平成27年度燃費基準はJC08モード燃費、平成22年度は10・15モード燃費がベースになること。4月以降の燃費はJC08モードで捉えるべきだが、補助金に平成22年度燃費基準プラス25%も含めたから、カタログなどには相変わらず10・15モード燃費の表記も必要になる。
それでも新型車で運用のされ方を見ると、トヨタ86やスバルBRZは減税、補助金ともに対象外のためか、JC08モード燃費のみの記載だ。CX-5はガソリンエンジン車でも平成27年度燃費基準を達成できるが、カタログには10・15モード燃費も併記されている。
ユーザーにとっては、補助金の対象に平成22年度燃費基準プラス25%車も含めてくれた方が有り難いが、制度としては矛盾を抱えた。減税が平成27年度燃費基準をベースにする以上、平成22年度燃費基準プラス25%まで含めたのでは、もはや「エコカー補助金」とは呼べないだろう。
このような歪みを生じさせるなら、冒頭で述べたように自動車取得税や同重量税を撤廃すべきだった。
なお、補助金の審査などを行う事務局は、前回と同じく次世代自動車振興センターになる。申請の受け付けは4月2日から行う予定だが、2011年12月20日に登録した車両から対象に含まれるため、すでに膨大な補助金対象車が販売済みだ。
にもかかわらず、2011年12月20日から12年5月31日までの登録車両は、6月29日までに審査を受理されねばならない。新車ディーラーは多忙を強いられる。
また、補助金の申請を受ける際、仮申請の制度も設けられた。補助金の予算は3000億円だが、使い切れば2013年1月31日を待たずに終了する。前回は2010年9月7日に突然終了し、ユーザーと販売会社を混乱させた。ユーザーが逃した補助金相当額を、販売会社が負担したケースも多い。そこで仮申請を行い、補助金終了間際の案内を正確に行えるようにする。
ユーザーとしては、期間中の登録分についてはキッチリと交付して欲しいが、実際にはそうならない。自動車取得税と同重量税を存続させたために、非常に面倒な補助金を運用するハメに陥った。
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